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眠れなかった。
サニーの家に住むようになってからは、ただでさえレッスンや舞台で体力を使っているのに、
夜もサニーにへとへとにさせられることが多く、ベッドに入れば一瞬で眠れた。
しかし、今日はー
いつもならとっくに眠りについている時間。
体が疲れている感じはあるのに脳が熱を倦むほど回転して、あれこれ考えてしまう。
ベッドの上で何度も寝返りを打つ。
「眠れない」
サニーは何をしているのだろう。
ふと思った。
夜、誘われなかった日は自室で仕事をしていることが多い。
まだ、起きているかも…
いや、もうさすがに寝ているだろう。
でも、もう眠っているとしても、サニーが眠っている傍に潜り込めば、少しは心が落ち着くかもしれない。
「サニー…」
小声で呼び掛けてみる。
そっと扉を開け、サニーの部屋に忍び込んだ。
ベッドの上はこんもりと盛り上がっている。
寝ているのだろうか。
「サニー」
もう一度呼び掛けると、ベッドの上で人影が動き、返事があった。
「昴…どうしたんだい?」
「眠れなくてー」
まだ、夜目はあまり利かないが、サニーがこちらに向けて手を広げているのが分かった。
歩み寄って抱きつく。
「どうしたの?今日は甘えん坊さんだね」
サニーが髪を撫でてくれる。
「いろいろ考えてしまって…」
「そうか」
「君と僕は似ているね」
「は?」
意外な一言だった。
僕とサニーは水と油みたいなものだと考えていたから。
「似てないと思うが」
「いや、考え方がそっくりだよ」
そうだろうか。
「昴は一つの物事についてどうやって考える?」
「とりあえず最悪のパターンを想定してから、考えられる限りのパターンを考える」
「僕も同じだよ。いつも最悪のパターンを想定してから、最善を目指している」
そうかもしれないと思う。
そういうところは似ているのかも知れない。
「二人とも努力家だしね」
「そうかもな」
サニーは表立ってはへらへらしていることが多いが、実は隠れてものすごく努力をしていることがある。
そして、いつでも結果を残していくのだ。
「寂しがり屋だしね…」
あぁ、それも同じだ。
「さ、もう眠ろうか」
「ん」
まだ話をしていたい気もするが、明日も早い。
でも、まだあまり眠くないと思っていたら、
「キスしていい?」
と聞かれた。
「構わないけど…」
何故いちいち聞くのだろうかと思ったら、唇がぎゅっと押しつけられて、
熱い喉が焼けるような液体が少しずつ流し込まれた。
(何…酒?)
それにしても口当たりがきつい。
「何?」
「ウォッカ」
「あぁ」
どうりですごいわけだ。
「昴は普段あまり飲んでないから、多分すぐ眠れるよ」
確かにもうくらくらする。
「サニーは?」
「僕は昴が抱き締めていてくれたら、眠れる」
゛昴は僕の精神安定薬だからね゛そう付け加えられ、それは自分も同じだと思う。
サニーは僕の手綱を握っていてくれる。
そっとサニーを抱き締める。首に腕を巻き付けて脚に脚を絡めて密着すると、とても落ち着いた。
「おやすみなさい」
「おやすみ…」
すぐに寝息が聞こえてきて、嬉しくなった。
僕はよく効くお薬。
そんなことを考えているうちに僕も意識を手放していた。
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