「優紀さーん、おじゃましまーす」
うるさい位の声と共にドタドタした足音が聞こえる。
ウザイのが来たと思いつつ、
鼓動が早くなるのを止められない…
無防備な女友達
「あれ?仁いたんだ?」
扉からひょっこり顔を出したのは−俺の幼馴染だ。
今は公立中学に通っている。
「いたら悪いのかよ…俺の部屋だぞ」
声に凄みを利かせてもにはきかない。
大股で俺の前を横切り、ベッドにダイブする。
「テニス部入ったって聞いたから…まだいないのかなぁと思ってた」
と言いつつ、枕を抱えてベッドの上でばたんばたんと寝返りを打ってる。
短すぎるプリーツスカートの裾が揺れた。
(こいつ誘ってるだろ…)
思わずそう思ってしまうが、そうではないことを経験上知っている。
ただ、やたらに無防備なんだ。
その証拠に−
「この枕、仁の匂いするぅ」
にんまりと笑いながら枕を顔に押し付けてくんくん匂いをかいでいる。
こんな女が何かを狙っている訳ない。
それにしても、その髪はなんだ?
前に会った時はもうワントーン暗かったぞ!
その下着みたいな服もなんだ?
馬鹿男に襲われても知らないぞ!!
は進学した公立中学の柄の悪さに着々と染まり、今や酷い格好だ。
そのくせ、可愛い。
さぞかしモテルのだろう…
の携帯は鳴りっぱなしだ。
(はぁ…)
俺は年頃の娘の父親になった心境。
最近は会わないようにしていたのに。
会っても直視できないから…
♪♪♪♪♪〜
の携帯が鳴る。
「はぁい。何−?今?今は駄目だよ。うん。うん…」
誰だよ。相手は。
「わかった。じゃあ、今度遊ぼうね。」
ムカムカする…
「え?海?ちょっと時期早くない?」
あぁ、もう駄目だ。
手を伸ばし、の手から携帯を奪い取り、電源を切る。
「何すんの?」
続きを言わせないため唇を塞いだ。
「んっ」
もがく手を捉え、体重をかけて動きを抑える。
何度か角度を変えくちづけ、やっと少し落ち着いて唇を離した。
おそるおそるの顔を見る。
は瞳を潤ませて泣きそうな顔をしていた。
「ど…どうして?」
の声は小さく、震えていた。
「なぁ、…」
「…な、何?」
「好きだ」
「だから、がちゃらちゃらした格好したり、他の男と楽しそうにしてるとイライラする」
「心配させんな…」
はじいっと俺を見ていた。
怯えたような目だと思った。
がこんな瞳をしているのを見たことはない。
(そりゃそうだよな…無理やり押し倒したんだから)
「悪かったな…」
から体を離して立ち上がった。
とりあえずこの場所にいるべきでないと思い、部屋を出ようとした。
「ごめんなさい」
背中にが抱きついてきた。
「も仁のこと好き」
「だから、どこも行かないで…」
「別に…どこも行かねーよ」
体の向きを変えて、を抱き締めた。
は瞳に涙を溜めて、口をヘの字にしていた。
その唇にちゅっとキスをする。
「えへへへへ」
満面の笑みを浮かべて、はさらに顔を歪めた。
「ぶっさいく」
「だってー仁にちゅうされちゃった♪」
会話通じてないぞ。
でも、可愛い。
「それくらいいくらでもしてやるよ…」
ぅわあと声を上げてが抱きついてきた。
駄目だ。
可愛い。
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