もう我慢の限界!
付き合いだしてもうすぐ1年。
なのにキスはたった1度きり。
それ以上のことなんてとんでもございません。
清い清い清いお付き合いです。
それも健太郎となら穏やかでのんびりしていていいのだけど…
何もなさすぎてちょっと−訂正、かなり不満。
清純にも地味夫婦とか言われるし!
もっと健太郎とふつーのカップルみたいにしたいだけなのに……
その日、珍しく私は健太郎の部屋にいた。
学校では普通に毎日会えるけど、2人っきりとなると健太郎は休日も部活やら付き合いやらで忙しいので、
なかなか会えない。
しかも、なんやかんや理由をつけて家には上げてくれないんだ。
(健太郎のいじわる…)
せっかくのおうちデートなのに健太郎はずっとテニス雑誌を読みふけっている。
私も最初は健太郎の部屋を物色することに夢中だったけど…
もう飽きた。
健太郎、私は放置?
何かのプレイ?
全然楽しくないんだけど?
「健太郎?」
「うーん?」
「ねぇ、何かしようよ?」
せっかくのデートなんだよ。
「もうちょっとしたらな」
「ねー健太郎?」
「……」
うわ!無視ですか?
もう限界。
私は健太郎の目の前に座り込んで、両肩に手を乗せる。
「健太郎…無視しないで」
健太郎は何も答えない。
「せっかくやっと2人っきりなんだから、何かしようよ?」
いつも健太郎のそばには大好きな部員さん達がいるでしょ。
だから、ずっと私我慢してるんだよ。
部員を大事にしてる健太郎が大好きだから。
「……」
返事がなくて泣きそうになっきた。
「私のこと…嫌?」
恐る恐る聞いてみる。
「…違う」
「ほんとに?」
「違う!」
怒鳴るみたいな声にびっくりした。
「ごめん。俺もと遊びたいけど…」
「けど?」
「と2人っきりだとドキドキし過ぎて…変になりそうだから、さ」
「うそ…」
健太郎がそんなこと思っていたなんて。
でも、耳まで真っ赤な顔を見て本当だってわかった。
(私って意外と愛されてたんだなぁ…)
感動。
「健太郎…私のこと好き?」
「好き」
「愛してくれてる?」
「…愛してるよ」
嬉しすぎて、健太郎の首に勢いよく抱きつく。
健太郎がバランスを崩して、後ろに倒れ込んだ。
私も一緒になって倒れる。
「きゃあ!」
すっごくまじかに健太郎の顔。
っていうか、私が押し倒したみたい。
(もう心臓飛び出ちゃいそう…)
とにかく健太郎の上から退かないとと思ったら、背中に腕を回された。
「健太郎…腕のけて」
「嫌だ…」
「ほら…私、重いし」
「だったら…」
健太郎は私の体を抱き締めたまま半転した。
今度は私が下になる。
「これでいいだろ?」
健太郎は足を床につけているので、確かにちっとも重くない。
でも、でも、この体勢もすっごく緊張する。
「…ごめん」
突然キスされる。
ちゅちゅちゅと軽くついばむように唇を吸われてから、舌が私の口の中に入ってきて、
あちこちを舐めた。
「あっ」
キスとキスの合間に髪や顔の輪郭を優しく撫でられる。
蕩けそう
健太郎の瞳の中に私だけがいる
嬉しい
長い長いキスの後、唇が離れた。
少し寂しい…
気持ちが通じたのか、健太郎の顔がまた近づき、
そっと触れるだけのキスをされる。
満たされていなかった気持ちがピンク色の幸せでいっぱいになって、涙が出た。
「…やっ」
自分でも驚いてしまう。
でも、涙はどんどん溢れ出す。
「大丈夫か?」
気遣わしげな顔の健太郎
ごめんね
大丈夫だよ
嬉しすぎてね
涙が止まらないだけ−
健太郎は優しい優しい笑顔で私のことを見守っていてくれた。
「おっじゃましまーす♪」
能天気なほどの明るい声とともに現われたのは…
「「清純…!」」
「あれ?地味夫婦お揃いで…子作り中だった?ごめんねぇ」
少しも悪びれてない顔で部屋にずかずかと入り込んでくる。
「南…いつまでちゃんの上乗ってるの?ちゃん潰れちゃうよ…」
(清純…邪魔)
せっかくすっごくすっごくいいところだったのに。
「清純…邪魔だ。帰れ」
私の気持ちと同じことを健太郎が言ってくれてすごく嬉しい。
「それはそれは…お取り込み中失礼しました」
清純はにやにや笑いながらわざとゆっくり歩いて部屋を出て行く。
「じゃあね〜お2人さん後はごゆっくりねぇ」
突然の訪問者が去った後、妙に悪い気分になった。
「清純に悪いことしたね…」
せっかくわざわざ遊びに来てくれたのに。
「いいんだよ」
健太郎はぶすっとした顔で言う。
「あいつ…がいるって知ってて来たんだよ」
「へ?」
「ごめんな。俺が…が部屋来るんだけどって、清純に相談しちゃったんだよ」
「じゃあ、清純わざと来たの?」
「たぶんな…」
健太郎がため息をつく。
私もため息をつきたくなった。
清純の馬鹿ッ!!!
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